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   ブッチリ!!

   ゾロのポイントを完全に外した返事に、サンジの頭の血管と神経が一緒に5〜6本はブチ切れた。

   全身を細かく震わせてから、スッとゾロに向かってクリームだらけの右手を差し出す。

   「てめぇ〜〜〜全部食えよ〜〜〜!ケーキ捨てたりしね〜って今言ったよな?

   約束通り全部食わなかったら、殺すぞ〜オラッ」

   酔いと怒りでサンジの頭も腐り気味だった。

   ゾロは無言で少し考えている様子だったが、突然、左手でサンジの右手首をグイッと持ち上げた。

   そのまま顔を寄せると、サンジの右手の平をベロリと舐めた。

   「こうすりゃ〜良いのか?」 

   実際にゾロが舐めるとは思っていなかったので、サンジは心底驚いていた。

   売り言葉に買い言葉。ちょっとした嫌がらせのつもりだったのだ。

   だから何と答えて言いのかわからず、返答に詰まって、口をパクパクさせただけだった。

   ゾロはさらに、サンジの右手首から腕へとゆっくり舐め上げた。

   ゾロの舌が辿った跡が、燃えるように熱い気がする。

   クリームにもブランデーを入れたせいだろうか?

   ゾロの塗れた舌が、サンジの腕を舐める度に、体温がどんどん上昇するような感じだった。

   霧の中で冷えきっていた身体が、逆に今は熱いくらいだった。




    しばらくして、サンジは身体をよじりながら笑っていた。

   「動くなよ。アホコック、舐めれね〜じゃね〜か」

   右腕のクリームはほとんど無くなったので、ゾロはサンジの首筋を舐めていた。

   くすぐったくて堪らないのでサンジが身体を揺すると、ゾロは両手でサンジの腰を掴んで固定した。

   身動きが出来なくなって、静かになったサンジだったが、何度か腰が下に落ちそうになる。

   「お前、立ってられね〜のか? 飲みすぎだぞ」

   「だから、てめぇに言われたく無いっつーの! アル中剣士!」

   サンジは頭も身体もとても熱くて、雲の上を歩いているみたいにフワフワしていた。

   また足がふらついて腰が落ちた。気がつくと、ゾロの腕が背中に回され、サンジは抱き上げられていた。

   (ホント怪力だな〜コイツ。オレ持ち上げられてるぞ??)

   でも、逆さづりにされた時のような嫌な気分にはならなかった。

   逆に、何だか暖かいとても良い気分だったので、自分もゾロの背中に腕を回して抱いてみた。

   密着したゾロの胸から、心臓の鼓動がしていたが、自分と同じくらい速くなっていた。


   (確か、友達ってのは、喧嘩した後に仲直りして抱擁するんだよな?)

   (もしかすると、コレがそうなのかもしれね〜なぁ)

   (オレのケーキも、潰れたのにちゃんと食ってくれたしな)

   (別に、嫌われてるってわけでも無いのかもな)

   (よしよし、絶交は撤回してやるぜ!)


   一人、勝手に問題を解決したサンジは、ゾロに向かって二コリと笑った。

   ゾロが驚いた顔をしたので、気づいたが、サンジはゾロに笑いかけた事は今まで無かった。

   睨みあった事はたくさんあるけれど。

   ゾロは険しい表情で、サンジを見つめていた。

   いつも思うが、獲物を狙う肉食獣のような鋭い眼光だった。

   でも、その瞳は濁りの無い澄んだ綺麗な深緑色で、サンジはそれも嫌いでは無いと思う。

   ゾロはそのままサンジの頬に唇を寄せると、数回頬のクリームを舐め取った。

   それから、耳元に口を寄せてこう言った。

   「美味かった。また、こういう飯なら食ってやっても良いぞ」

   ケーキの味を褒められたらしい。

   サンジはゾロに料理を褒められたのは、初めてだったので、ものすごく嬉しい気分になった。

   そのまま、ゾロの肩に頭を乗せているうちに、だんだんと眠くなってしまった。

   サンジの記憶は、この辺りで途絶えている。

   その後で不思議な夢をたくさん見たように思うが、朝起きた時には覚えていなかった。



                                 
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